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マビノギ小説 Passion Play 〜あるミレシアンの手記より〜 第5話
第5話 タルティーン防御戦『春の目覚め』作戦
「ギャンブル、各門の配置は問題ないか?」
「ええ、東門のウェイター、南門のウェイトレス、西門のホール係それぞれ配置完了。そして、斥候からの報告でもう間もなく各門にお客様到着予定よ」
「OK!」
エイリフ直属ギルド『砂漠の狐』ギルマス・モンタナはサブマス・ギャンブルの報告に軽く頷いた。ここは影世界のタルティーン城内の広場。ここにギルド司令部を置いたモンタナはこの広場で、ポウォールを一挙に殲滅しようと考えていた。ギルメン達を近接・弓・錬金術師の三職種混成の3チームに分け、3門同時にお客様を広場に案内するように指示を出していた。特に広場から距離が近い西門にはジャイアントのギルメンを数多く配置し、早すぎず遅すぎずエスコートするようにと厳命を下していた。と、そこへエイリフの軍服を着たギルメンのエルフが馬に乗って駆けつけてきた。
「ウェイターより歓迎委員会へ報告!お客様到着、現在応対中!」
「よし、焦らしつつ広場へご案内するように。マインの準備もOKだな?」
「ぬかりなく!マスターの指示通り、道中にランク9アイスマインをちらほら埋設してあります」
「わかった、気を抜くなとウェイター長のパーソンズに伝えてくれ」
「了解!」
エルフ兵は敬礼すると、馬に飛び乗り東門へと駆けて行った。
「マスター、南門のウェイトレスからも接敵の連絡をフクロウで知らせてきました!」
ギャンブルが少し顔を紅潮させながら報告してきた。
「ウェイトレス長・シュナイダーにも、まったりこちらにお迎えするようにと伝令を飛ばしてくれ」
「了解です!」
ギャンブルが伝令の用意を始めるべく、手の空いているギルメンに声を掛け指示を出しに動く。
「マスター、一体ポウォールはどれくらい来ると予想しているのですか?」
モンタナの指示で広場に設置されているかまどを使ってランク1アイスマインを作りながら、ギルドの魔法師チーム【クレイジー・ダイアモンド】のキャプテン・ウォーターズが興味深く訊ねた。
「そうだなぁ・・・俺達30名の約10倍以上は確実だな・・・5〜600はいるのではないか?」
「な、なんだってー!マスター、あんたって相変わらず無茶な作戦考えるもんだぜ」
「ウォーターズ、頭を使え。いいか、このタルティーンの入り口は3つ。更に城内は狭いときている。3つに割れば200、しかし城門を200の敵が一気に突破出来ると思うか?」
「なるほどね!マスターは敵を分割してなおかつ狭い場所から少しずつ敵を誘いこんで撃滅するっていう考えなんだ!」
同じくアイスマイン作りをしている【クレイジー・ダイアモンド】メンバーの女魔法師・ギルモアが横から話に参加してきた。
「ギルモア、撃滅ではなくここに誘い込む事が一番肝要なんだぜ。それも、3方向同時にこの広場へ案内する事。そこで、お前達厨房メンバーがこんがり焼きあげるという大事なお仕事があるんだからな」
「マスターは、敵を引き寄せるために見かけ倒しの陣地戦ではなく、いささか死守する姿勢をみせて敵に我々が内部に入れては困る!という錯覚を引き起こさせるために、怪しまれない程度の抵抗をするようにと指示を出しているのよ。それにこの広場で一気に勝負を付けないとあたし達がチェックメイトされちゃうしね…」
伝令を送り出したギャンブルが、ウォーターズとギルモアに説明する。
「なるほど〜・・・」
2人が感心していると西門からジャイアントの伝令が息を切らせて飛び込んできた。
「西門ホール係、お客様が有力部隊を同伴しており対応しきれない状態になってます!」
「ほぉ、ポウォールもやるじゃないか・・・。では、俺が行くとするか」
モンタナが伝令の報告を受けて自ら陣頭指揮を取るべく馬を用意しようとすると、
「待って、モンタナ。あなたが動いては歓迎委員会の指揮は誰が取るの?オーナーはここでしっかりお客様をお迎えするのがお仕事よ。ここはあたしに任せて!」
ギャンブルはそういうと素早くファルコンセイジに変身した。
「エルブンマジックミサイルで数減らしして、しっかりこっちへ引き付けてくるわ。モンタナはお迎えの準備を!さ、行くわよ!」
ジャイアントのギルメンと共に、愛用のウィングボウと矢筒を手に白虎に飛び乗ると西門へ駆けだしていくギャンブル。
「あいつもギルドに慣れてくれたもんだ・・・サブマスが板についてきた!うんうん、俺の手間が大分減ったぜ」
微笑を浮かべるモンタナに、
「マスター、ギャンブルちゃんに手を掛けたら俺が許さないぜ!ギャンブルちゃんは俺と・・・」
「ウォーターズ、口を動かす暇があったらさっさと防護壁作り手伝いなさいよ!」
ウォーターズがモンタナに軽口を叩くと同時に、ギルモアからカミソリより鋭い叱声が飛ぶ。
「ぶわははは、そういう軽い口調だからタルティーンの酒場女に毎日惨敗なんだよ。自称色男のウォーターズさん」
「マスター!作戦中です!!私語は慎んでください!!」
今度はモンタナにも叱声が飛ぶ。
「は、ハイッ!」
思わず声が裏がるモンタナに、周囲から爆笑の渦が沸き起こった。
「おまえら・・・、しっかり聞いてやがったのか」
「当然じゃないですかー!砂漠の狐ギルドメンバーだったら、こんな面白い話作戦中でも聞き逃せませんよ。ユーモアは人生の調味料だ!ってこの前、マスターが泥酔しながら絶叫してたじゃないですか!その場にいたアンドラス司令官が呆れておられましたよ!」
間髪入れず返ってきたギルメンの言葉に、
「なに!アンドラスにか!!ぬかった・・・あいつにだけは聞かれたくなかった。これでまた、無理難題がふっかけられる口実を作っちまったぜ」
モンタナのその一言で更に爆笑が広がった。作戦中は緊張の連続である。緊張は初歩的なミスを誘発する危険要因の一つであることをモンタナは十分承知していた。それだけに、いかに心地よい緊張感を保持しつつリラックスできる状態に持っていけるか?その状態こそ、実力を120%以上引き出せる事をモンタナは知っているからこそ、ギルドメンバーを最高のテンションに持って行かせて戦場で活躍させるように雰囲気作りをしている。この事実を知るのはサブマスのギャンブル、アンドラスのみである。そんな中、アイスマインの爆発音が各所からこだましてきた。敵が近づいてきた証拠である。
「よし、マインを広場の各所に埋設したら持ち場についてくれ。まもなくお客様が到着されるぞ」
それと同時に東門・南門からフクロウが手紙を届けてきた。ポウォールは数を減らしながらも確実に広場へ侵攻中との内容に、モンタナは満足した。そして騎乗したギャンブルも帰ってきた。
「マスター、西門のお客様が多かったからランク5アイスマインを一斉に投げ込んで数減らしして、エルブンマジックミサイルとフレイマー部隊で追い打ち掛けて適当な数に減らしてきたから。お客さん、完全に頭に血が上ってジャイアントのギルメン達と取っ組み合いしながらこちらに向かっているわ。マインもなんのその、見境がなくなるってこういうことなのねって言うのがよく分かったわ」
苦笑を浮かべながらギャンブルが話すとモンタナが、
「アラト錬金術師もいたんじゃないのか?」
「いたけど、シリンダー使わず殴り合いだからね」
「ふっ、人はそれを『匹夫の勇』という・・・というやつだな。よし、ウォーターズ。そろそろ準備を始めようか」
ギャンブルの言葉に不敵に笑うと、モンタナはウォーターズ達に魔法の詠唱を開始させた。
「ラジャー、マスター!よーしギルモア、メイスン、ライト、バレットおっぱじめるぜ!俺達【クレイジー・ダイアモンド】の本領発揮だ!」
「OK!」
「ひゃっはー、腕がなるぜ!」
「任せてください!」
「これより、爆発祭りを始めちゃいますよっと!」
4人がすかさず威勢のいい返事で応える。
「よし、他のメンバーは3門から引き付けてきたメンバーの受け入れ、そして退避準備に入れ!ファイアマジックシールドの準備も怠るなよ!対爆装備の再確認も忘れるな!」
ここにきて、緊張感が一気に高まってきた。モンタナの出す指示も矢継ぎ早に的確に厳しくなってくる。ウォーターズ・ギルモアはファイアボールの詠唱、メイスン・ライト・バレットはファイアボルトの詠唱を始めた。5人ともファイアボルトマスター・ファイアボールマスターでもあって火属性魔法の詠唱はお手の物であった。詠唱終了と同時に3方向からポウォールが広場へなだれ込んできた。各門のギルメンは待ち構えたギルメンの誘導で防護壁の中へ誘導され、広場はポウォールで埋め尽くされた。それを見たモンタナはニヤリと笑うと合図を送った。
「イッツ・ショータイム!」
まず弓師達が、広場に埋設されたアイスマイン目掛けて矢を放つと爆発が起こりポウォールの軍勢が大混乱を引き起こす。そこにタワーシリンダーから発射されたランク1サンダーの結晶が頭上に降り注ぐ。混乱のさなか、脱出を図ろうとするポウォールには容赦なく矢が射られ、ウォーターキャノンが放たれる。そこへ、魔法をチャージしていたウォーターズ達が満を持して魔法を放った。
「いっけぇ!合体魔法【クリムゾン・ノート】!」
ランク1ファイアボール2発とランク1フルチャージファイアボルト3発が大混乱のポウォールの頭上に放たれる。それらが一つになった時、猛烈な光と衝撃波が広場を含めタルティーン城内を襲った。
「ファイアマジックシールド展開!対爆装備の無いものは防護壁の内側へ退避、伏せろ!爆発、来るぞ!」
モンタナの絶叫のすぐ後に巨大な火球が広場目掛けて落下を始め、着弾した。その直後、最初の衝撃はとは格段に上の爆発と爆風、衝撃波がタルティーン城内に広がった。
「うわぁぁぁぁぁ」
あまりの衝撃の大きさに、ギルメン達も吹き飛ばされまいと必死になって爆風をこらえる。やがて数分が経過して、ようやく爆発がおさまり広場が直視できるようになったがその光景は異様というものだった。広場だった跡地には巨大なクレーターが形成され、当然そこにいたポウォール達は消滅していた。周囲の防護壁も全て破壊されていたが、ファイマジックシールドと防護壁により、ギルメン達へのダメージは軽微であった。ダスティンシルバーナイトの鎧で身を固めていたモンタナは、じっとクレーターを見つめていた。
「【クリムゾン・ノート】は使う場所が限られる諸刃の剣か・・・。だが、これを使っても戦況が変わる約束はどこにもないのが現実・・・」
「マスター、戦いはこれからですよ。不可能を可能に出来る!それがトゥアハ・デ・ダナン達であり、あたし達ミレシアンである。女神モリアンもきっと、同じ事を言われるでしょう。まずは小さな事からこつこつ積み上げていくことです。如何なる逆境でも、明るく楽しく、豪快に笑い飛ばして逆転させるのが『砂漠の狐』ギルドではないのですか?」
土埃で顔が真っ黒になったギャンブルが言ったのだが、モンタナはその言葉より真っ黒な顔のギャンブルが面白くて思わず爆笑してしまった。
「モンタナ・・・あんたってギルマスは!」
流石のギャンブルも三白眼になってウィングボウをモンタナに向けて矢を射る態勢に入る。
「ま、待ってくれサブマス!ぷっ!ギャンブル、お前のその汚れた顔は軍法会議ものの面白さだ!」
「殺す!」
完全にぶち切れたギャンブルがクラッシュショットをモンタナに放つ。そうはさせじとモンタナは馬に乗って逃走を始める。そんな光景を見て、ギルメン達はニヤニヤしながら見送っていた。
「あーあ、まーた始まったよ。あの二人、仲がいいのか悪いのかよくわからんが・・・」
ギルドの近接チーム【マジック・クリスチャン】キャプテン・パーソンズが呆れ顔でウォーターズの許へ歩いてくる。
「まぁ、あれがギルドをいい雰囲気に持って行っているんだし、エイリフ軍にいるって気がしないのは確かよね」
同じくギルドの弓師チーム【バッド・フィンガー】キャプテン・シュナイダーもハイランダーロングボウを手に集まってきた。
「この雰囲気だからこそ、我々もこうやって少人数ながら大多数の敵の撃滅に成功できるのでしょう。いわば、何でもあり!というべきなのでしょうか・・・」
ギルドの錬金術師チーム【タルカス】キャプテン・リオンも各キャプテンが集まった事に気がついて近づいてきた。
「ま、結果オーライってことさ。とりあえずこれで、アンドラス司令官率いる遠征隊もタラ南部解放は確実だろうし。この影世界のタルティーン周辺でも悪さする奴はしばらくはいなくなるだろうし、ここもエリンのタルティーン同様に前線基地が置けるんじゃないかな?マスターなら間違いなく言いそうだけどな。でも、ここの穴埋めは俺達でやらなきゃいけないんだろうな・・・」
ウォーターズの言葉にげんなりする3人。
タルティーン防御戦『春の目覚め』作戦はエイリフ側に一人の損害を出すことなく、ポウォール軍壊滅という歴史的な勝利で幕を閉じたのであった。
「ギャンブル、各門の配置は問題ないか?」
「ええ、東門のウェイター、南門のウェイトレス、西門のホール係それぞれ配置完了。そして、斥候からの報告でもう間もなく各門にお客様到着予定よ」
「OK!」
エイリフ直属ギルド『砂漠の狐』ギルマス・モンタナはサブマス・ギャンブルの報告に軽く頷いた。ここは影世界のタルティーン城内の広場。ここにギルド司令部を置いたモンタナはこの広場で、ポウォールを一挙に殲滅しようと考えていた。ギルメン達を近接・弓・錬金術師の三職種混成の3チームに分け、3門同時にお客様を広場に案内するように指示を出していた。特に広場から距離が近い西門にはジャイアントのギルメンを数多く配置し、早すぎず遅すぎずエスコートするようにと厳命を下していた。と、そこへエイリフの軍服を着たギルメンのエルフが馬に乗って駆けつけてきた。
「ウェイターより歓迎委員会へ報告!お客様到着、現在応対中!」
「よし、焦らしつつ広場へご案内するように。マインの準備もOKだな?」
「ぬかりなく!マスターの指示通り、道中にランク9アイスマインをちらほら埋設してあります」
「わかった、気を抜くなとウェイター長のパーソンズに伝えてくれ」
「了解!」
エルフ兵は敬礼すると、馬に飛び乗り東門へと駆けて行った。
「マスター、南門のウェイトレスからも接敵の連絡をフクロウで知らせてきました!」
ギャンブルが少し顔を紅潮させながら報告してきた。
「ウェイトレス長・シュナイダーにも、まったりこちらにお迎えするようにと伝令を飛ばしてくれ」
「了解です!」
ギャンブルが伝令の用意を始めるべく、手の空いているギルメンに声を掛け指示を出しに動く。
「マスター、一体ポウォールはどれくらい来ると予想しているのですか?」
モンタナの指示で広場に設置されているかまどを使ってランク1アイスマインを作りながら、ギルドの魔法師チーム【クレイジー・ダイアモンド】のキャプテン・ウォーターズが興味深く訊ねた。
「そうだなぁ・・・俺達30名の約10倍以上は確実だな・・・5〜600はいるのではないか?」
「な、なんだってー!マスター、あんたって相変わらず無茶な作戦考えるもんだぜ」
「ウォーターズ、頭を使え。いいか、このタルティーンの入り口は3つ。更に城内は狭いときている。3つに割れば200、しかし城門を200の敵が一気に突破出来ると思うか?」
「なるほどね!マスターは敵を分割してなおかつ狭い場所から少しずつ敵を誘いこんで撃滅するっていう考えなんだ!」
同じくアイスマイン作りをしている【クレイジー・ダイアモンド】メンバーの女魔法師・ギルモアが横から話に参加してきた。
「ギルモア、撃滅ではなくここに誘い込む事が一番肝要なんだぜ。それも、3方向同時にこの広場へ案内する事。そこで、お前達厨房メンバーがこんがり焼きあげるという大事なお仕事があるんだからな」
「マスターは、敵を引き寄せるために見かけ倒しの陣地戦ではなく、いささか死守する姿勢をみせて敵に我々が内部に入れては困る!という錯覚を引き起こさせるために、怪しまれない程度の抵抗をするようにと指示を出しているのよ。それにこの広場で一気に勝負を付けないとあたし達がチェックメイトされちゃうしね…」
伝令を送り出したギャンブルが、ウォーターズとギルモアに説明する。
「なるほど〜・・・」
2人が感心していると西門からジャイアントの伝令が息を切らせて飛び込んできた。
「西門ホール係、お客様が有力部隊を同伴しており対応しきれない状態になってます!」
「ほぉ、ポウォールもやるじゃないか・・・。では、俺が行くとするか」
モンタナが伝令の報告を受けて自ら陣頭指揮を取るべく馬を用意しようとすると、
「待って、モンタナ。あなたが動いては歓迎委員会の指揮は誰が取るの?オーナーはここでしっかりお客様をお迎えするのがお仕事よ。ここはあたしに任せて!」
ギャンブルはそういうと素早くファルコンセイジに変身した。
「エルブンマジックミサイルで数減らしして、しっかりこっちへ引き付けてくるわ。モンタナはお迎えの準備を!さ、行くわよ!」
ジャイアントのギルメンと共に、愛用のウィングボウと矢筒を手に白虎に飛び乗ると西門へ駆けだしていくギャンブル。
「あいつもギルドに慣れてくれたもんだ・・・サブマスが板についてきた!うんうん、俺の手間が大分減ったぜ」
微笑を浮かべるモンタナに、
「マスター、ギャンブルちゃんに手を掛けたら俺が許さないぜ!ギャンブルちゃんは俺と・・・」
「ウォーターズ、口を動かす暇があったらさっさと防護壁作り手伝いなさいよ!」
ウォーターズがモンタナに軽口を叩くと同時に、ギルモアからカミソリより鋭い叱声が飛ぶ。
「ぶわははは、そういう軽い口調だからタルティーンの酒場女に毎日惨敗なんだよ。自称色男のウォーターズさん」
「マスター!作戦中です!!私語は慎んでください!!」
今度はモンタナにも叱声が飛ぶ。
「は、ハイッ!」
思わず声が裏がるモンタナに、周囲から爆笑の渦が沸き起こった。
「おまえら・・・、しっかり聞いてやがったのか」
「当然じゃないですかー!砂漠の狐ギルドメンバーだったら、こんな面白い話作戦中でも聞き逃せませんよ。ユーモアは人生の調味料だ!ってこの前、マスターが泥酔しながら絶叫してたじゃないですか!その場にいたアンドラス司令官が呆れておられましたよ!」
間髪入れず返ってきたギルメンの言葉に、
「なに!アンドラスにか!!ぬかった・・・あいつにだけは聞かれたくなかった。これでまた、無理難題がふっかけられる口実を作っちまったぜ」
モンタナのその一言で更に爆笑が広がった。作戦中は緊張の連続である。緊張は初歩的なミスを誘発する危険要因の一つであることをモンタナは十分承知していた。それだけに、いかに心地よい緊張感を保持しつつリラックスできる状態に持っていけるか?その状態こそ、実力を120%以上引き出せる事をモンタナは知っているからこそ、ギルドメンバーを最高のテンションに持って行かせて戦場で活躍させるように雰囲気作りをしている。この事実を知るのはサブマスのギャンブル、アンドラスのみである。そんな中、アイスマインの爆発音が各所からこだましてきた。敵が近づいてきた証拠である。
「よし、マインを広場の各所に埋設したら持ち場についてくれ。まもなくお客様が到着されるぞ」
それと同時に東門・南門からフクロウが手紙を届けてきた。ポウォールは数を減らしながらも確実に広場へ侵攻中との内容に、モンタナは満足した。そして騎乗したギャンブルも帰ってきた。
「マスター、西門のお客様が多かったからランク5アイスマインを一斉に投げ込んで数減らしして、エルブンマジックミサイルとフレイマー部隊で追い打ち掛けて適当な数に減らしてきたから。お客さん、完全に頭に血が上ってジャイアントのギルメン達と取っ組み合いしながらこちらに向かっているわ。マインもなんのその、見境がなくなるってこういうことなのねって言うのがよく分かったわ」
苦笑を浮かべながらギャンブルが話すとモンタナが、
「アラト錬金術師もいたんじゃないのか?」
「いたけど、シリンダー使わず殴り合いだからね」
「ふっ、人はそれを『匹夫の勇』という・・・というやつだな。よし、ウォーターズ。そろそろ準備を始めようか」
ギャンブルの言葉に不敵に笑うと、モンタナはウォーターズ達に魔法の詠唱を開始させた。
「ラジャー、マスター!よーしギルモア、メイスン、ライト、バレットおっぱじめるぜ!俺達【クレイジー・ダイアモンド】の本領発揮だ!」
「OK!」
「ひゃっはー、腕がなるぜ!」
「任せてください!」
「これより、爆発祭りを始めちゃいますよっと!」
4人がすかさず威勢のいい返事で応える。
「よし、他のメンバーは3門から引き付けてきたメンバーの受け入れ、そして退避準備に入れ!ファイアマジックシールドの準備も怠るなよ!対爆装備の再確認も忘れるな!」
ここにきて、緊張感が一気に高まってきた。モンタナの出す指示も矢継ぎ早に的確に厳しくなってくる。ウォーターズ・ギルモアはファイアボールの詠唱、メイスン・ライト・バレットはファイアボルトの詠唱を始めた。5人ともファイアボルトマスター・ファイアボールマスターでもあって火属性魔法の詠唱はお手の物であった。詠唱終了と同時に3方向からポウォールが広場へなだれ込んできた。各門のギルメンは待ち構えたギルメンの誘導で防護壁の中へ誘導され、広場はポウォールで埋め尽くされた。それを見たモンタナはニヤリと笑うと合図を送った。
「イッツ・ショータイム!」
まず弓師達が、広場に埋設されたアイスマイン目掛けて矢を放つと爆発が起こりポウォールの軍勢が大混乱を引き起こす。そこにタワーシリンダーから発射されたランク1サンダーの結晶が頭上に降り注ぐ。混乱のさなか、脱出を図ろうとするポウォールには容赦なく矢が射られ、ウォーターキャノンが放たれる。そこへ、魔法をチャージしていたウォーターズ達が満を持して魔法を放った。
「いっけぇ!合体魔法【クリムゾン・ノート】!」
ランク1ファイアボール2発とランク1フルチャージファイアボルト3発が大混乱のポウォールの頭上に放たれる。それらが一つになった時、猛烈な光と衝撃波が広場を含めタルティーン城内を襲った。
「ファイアマジックシールド展開!対爆装備の無いものは防護壁の内側へ退避、伏せろ!爆発、来るぞ!」
モンタナの絶叫のすぐ後に巨大な火球が広場目掛けて落下を始め、着弾した。その直後、最初の衝撃はとは格段に上の爆発と爆風、衝撃波がタルティーン城内に広がった。
「うわぁぁぁぁぁ」
あまりの衝撃の大きさに、ギルメン達も吹き飛ばされまいと必死になって爆風をこらえる。やがて数分が経過して、ようやく爆発がおさまり広場が直視できるようになったがその光景は異様というものだった。広場だった跡地には巨大なクレーターが形成され、当然そこにいたポウォール達は消滅していた。周囲の防護壁も全て破壊されていたが、ファイマジックシールドと防護壁により、ギルメン達へのダメージは軽微であった。ダスティンシルバーナイトの鎧で身を固めていたモンタナは、じっとクレーターを見つめていた。
「【クリムゾン・ノート】は使う場所が限られる諸刃の剣か・・・。だが、これを使っても戦況が変わる約束はどこにもないのが現実・・・」
「マスター、戦いはこれからですよ。不可能を可能に出来る!それがトゥアハ・デ・ダナン達であり、あたし達ミレシアンである。女神モリアンもきっと、同じ事を言われるでしょう。まずは小さな事からこつこつ積み上げていくことです。如何なる逆境でも、明るく楽しく、豪快に笑い飛ばして逆転させるのが『砂漠の狐』ギルドではないのですか?」
土埃で顔が真っ黒になったギャンブルが言ったのだが、モンタナはその言葉より真っ黒な顔のギャンブルが面白くて思わず爆笑してしまった。
「モンタナ・・・あんたってギルマスは!」
流石のギャンブルも三白眼になってウィングボウをモンタナに向けて矢を射る態勢に入る。
「ま、待ってくれサブマス!ぷっ!ギャンブル、お前のその汚れた顔は軍法会議ものの面白さだ!」
「殺す!」
完全にぶち切れたギャンブルがクラッシュショットをモンタナに放つ。そうはさせじとモンタナは馬に乗って逃走を始める。そんな光景を見て、ギルメン達はニヤニヤしながら見送っていた。
「あーあ、まーた始まったよ。あの二人、仲がいいのか悪いのかよくわからんが・・・」
ギルドの近接チーム【マジック・クリスチャン】キャプテン・パーソンズが呆れ顔でウォーターズの許へ歩いてくる。
「まぁ、あれがギルドをいい雰囲気に持って行っているんだし、エイリフ軍にいるって気がしないのは確かよね」
同じくギルドの弓師チーム【バッド・フィンガー】キャプテン・シュナイダーもハイランダーロングボウを手に集まってきた。
「この雰囲気だからこそ、我々もこうやって少人数ながら大多数の敵の撃滅に成功できるのでしょう。いわば、何でもあり!というべきなのでしょうか・・・」
ギルドの錬金術師チーム【タルカス】キャプテン・リオンも各キャプテンが集まった事に気がついて近づいてきた。
「ま、結果オーライってことさ。とりあえずこれで、アンドラス司令官率いる遠征隊もタラ南部解放は確実だろうし。この影世界のタルティーン周辺でも悪さする奴はしばらくはいなくなるだろうし、ここもエリンのタルティーン同様に前線基地が置けるんじゃないかな?マスターなら間違いなく言いそうだけどな。でも、ここの穴埋めは俺達でやらなきゃいけないんだろうな・・・」
ウォーターズの言葉にげんなりする3人。
タルティーン防御戦『春の目覚め』作戦はエイリフ側に一人の損害を出すことなく、ポウォール軍壊滅という歴史的な勝利で幕を閉じたのであった。




